赤のひとの話

一緒に地獄に落ちようね

傘越しの恋人

あー雨だ。しんどい。

雨の匂いは嫌いじゃないけど、服や靴が濡れるから雨降りの日は嫌だ。
水を含んで足に張り付くズボンの裾や、スニーカーの中のギュムギュムと不快な感触を考えるだけで鬱々とする。

ああでも濡れてなくたってこの服は嫌いだな。
ジーパンにTシャツ、スニーカー。
「紅」じゃない、こんな服は紅じゃない。

私にとって「紅であること」が自然で、そうでないことは不自然だ。

ワンピースが着たい。少し高いヒールを履きたい。XANXUSのかわいい女でいたい。
XANXUSのためじゃなくて、これは私のためだ。


外に出て傘を広げる。

あの雨の男のこともキライじゃないけど、私にできないことが出来るからイヤだ。
だって私は戦えないし、イタリア語読めないから書類とかよくわからないし。

ほんとは私もXANXUSの役に立ちたいよ。
「お前にしか頼めない」って言われたい。

そういえば、そのXANXUSは気圧の変化に少し弱いようだ。
私は気圧に影響されないけれど、XANXUSはよく雨の朝は眉間にシワを寄せている。
頭痛い?って聞くと否定するけど、多分しんどいんだろう。
誤魔化さなくたっていいのに。
あとで頭痛薬きらしてないか見ておこう。


ねえ明日は晴れるかな。
XANXUSが死ぬ日は雨の日じゃなければいい。